Japanese(i)
16 かれ豚の食ふ蝗豆にて、己が腹を充さんと思ふ程なれど、何をも與ふる人なかりき。 17 此のとき我に反りて言ふ『わが父の許には食物あまれる雇人いくばくぞや、然るに我は飢ゑてこの處に死なんとす。 18 起ちて我が父にゆき「父よ、われは天に對し、また汝の前に罪を犯したり。 19 今より汝の子と稱へらるるに相應しからず、雇人の一人のごとく爲し給へ』と言はん」 20 乃ち起ちて其の父のもとに往く。なほ遠く隔りたるに、父これを見て憫み、走りゆき、其の頸を抱きて接吻せり。 21 子、父にいふ「父よ、我は天に對し又なんぢの前に罪を犯したり。今より汝の子と稱へらるるに相應しからず」 22 されど父、僕どもに言ふ「とくとく最上の衣を持ち來りて之に著せ、その手に指輪をはめ、其の足に鞋をはかせよ。 23 また肥えたる犢を牽ききたりて屠れ、我ら食して樂しまん。 24 この我が子、死にて復生き、失せて復得られたり」かくて彼ら樂しみ始む。