Acts 27:9-28

Japanese(i) 9 船路久しきを歴て、斷食の期節も既に過ぎたれば、航海危きにより、パウロ人々に勸めて言ふ、 10 『人々よ、我この航海の害あり損多くして、ただ積荷と船とのみならず、我らの生命にも及ぶべきを認む』 11 されど百卒長は、パウロの言ふ所よりも船長と船主との言を重んじたり。 12 且この港は冬を過すに不便なるより、多數の者も、なし得んにはピニクスに到り、彼處にて冬を過さんとて、此處を船出するを可しとせり。ピニクスはクレテの港にて東北と東南とに向ふ。 13 南風おもむろに吹きたれば、彼ら志望を得たりとして錨をあげ、クレテの岸邊に沿ひて進みたり。 14 幾程もなくユーラクロンといふ疾風その島より吹きおろし、 15 之がために船は吹き流され、風に向ひて進むこと能はねば、船は風の追ふに任す。 16 クラウダといふ小島の風下の方にいたり、辛うじて小艇を收め、 17 これを船に引上げてのち、備綱にて船體を卷き縛り、またスルテスの洲に乘りかけんことを恐れ、帆を下して流る。 18 いたく暴風に惱され、次の日、船の者ども積荷を投げすて、 19 三日めに手づから船具を棄てたり。 20 數日のあひだ日も星も見えず、暴風はげしく吹き荒びて、我らの救はるべき望ついに絶え果てたり。 21 人々の食せぬこと久しくなりたる時、パウロその中に立ちて言ふ『人々よ、なんぢら前に我が勸をきき、クレテより船出せずして、この害と損とを受けずあるべき筈なりき。 22 いま我なんぢらに勸む、心安かれ、汝等のうち一人だに生命をうしなふ者なし、ただ船を失はん。 23 わが屬するところ我が事ふる所の神の使、昨夜わが傍らに立ちて、 24 「パウロよ、懼るな、なんぢ必ずカイザルの前に立たん、視よ、神は汝と同船する者をことごとく汝に賜へり」と云ひたればなり。 25 この故に人々よ、心安かれ、我はその我に語り給ひしごとく必ず成るべしと神を信ず。 26 而して我らは或島に推上げらるべし』 27 かくて十四日めの夜に至りて、アドリヤの海を漂ひゆきたるに、夜半ごろ水夫ら陸に近づきたりと思ひて、 28 水を測りたれば、二十尋なるを知り、少しく進みてまた測りたれば、十五尋なるを知り、